宇波彰現代哲学研究所

多種多様な「知」の交流を通じ文化創造との実践的な橋渡しをめざし、新たな学問分野の開拓を行う研究機関のブログです。

月例読書会のお知らせ

いつも当研究所のブログをご覧頂きありがとうございます。

10月28日(水)15時より、明治学院大学白金キャンパス1558教室において、
明治学院大学言語文化研究所様が主催されます、
首席フェロー宇波彰による月例読書会「記号哲学講義」が行われます。

参考URL:
http://www.meijigakuin.ac.jp/~gengo/bookclub/index.html

今回のテーマは「ラカンの反復論再考2」を予定しております。

参加費は無料です。
関心のある方はぜひご参加ください。

参加を希望される方は当日教室まで直接お越しください。
お問い合わせは上記URL、明治学院大学言語文化研究所様か、
当ブログコメント欄までご連絡いただきますようお願いいたします。

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上海の森

 去る9月下旬に、都市基本問題研究会は、中国上海での調査を行なった。上海は、現代都市の基本的な問題を数多く抱えている都市のように思われたからである。以下はその簡単な報告である。
 上海についての私の知識は、藤原恵洋の『上海』(講談社現代新書、1988)がほとんど唯一の情報源であった。藤原恵洋とは一度だけ会ったことがある。熊本アートポリスの調査に行った時、車で案内してくれた。しかし、その後の交流はない。彼は何度も上海を訪れ、その建築を中心にいろいろ調査したことがこの本を読むとわかるが、興味深いのは、船を使って上海に行ったときの経験が描かれているところである。鑑真号という船の名前も面白い。大阪もしくは神戸から上海まで二日で着いたという。飛行機なら3時間足らずで行く距離である。
 私は藤原恵洋の著作を再読して上海に行ったのだが、彼の著作のサブタイトルである「疾走する近代都市」が眼前に展開されているのを見て、まさに上海という都市画急速に変化しつつあることを感じた。2008年に森ヒルズによって建てられたばかりの「上海環球金融中心」は500メートルに近い超高層ビルで、その展望台に登るエレベーターは急速で一気に客を連れていく。エレベーターそのものが「疾走」しているのだ。500メートルの高みから市内を見渡すと、上海の中心地が高層ビルの「森」であることがわかる。しかしその森は汚れた空気に包まれている。
 拙宅からは新宿の高層ビルが遠望できるが、林立する上海の高層ビル群に比べると何ということもない。上海の高層ビルの「集落」のようなものは「林立」という形容では描き切れないものがある。私がこの報告のタイトルを「上海の森」にしたのは、「上海の高層ビルの森」という意味である。いままで見なかったものを見るとき、われわれは驚きを感じるのであるが、上海の高層ビルの森は、私が見たことのないものであった。
 いま私は、フロイト、ラカンの概念である「反復」の問題をいろいろ考えていて、このブログでも、岡田三郎助の作品「民族協和」(1936)と、1941年に発行された「満州帝国建国10年記念切手」のデザインとの反復的関係などを考えているところである。それでは、上海環状金融中心の展望台から見た上海の「超近代的」光景は、何を反復しているのであろうか。おそらく、いままで人々が描いてきた「未来都市」のイメージの反復であろう。ビルとビルのあいだには、粗末で汚れた古い家並みが残っているところがある。やがては取り壊されて、新しいビルの敷地になるであろう。
 市内と空港を結ぶリニアモーターカーにも乗ってみたが、車内で表示される速度を見ていると、「時速431キロメートル」と読めたときがあった。30キロメートルを7分で走るので、アッという間に着いてしまう。まさに「疾走する」都市である。しかし市内の道路は車の群れがけたたましいクラクションを鳴らして、「渋滞」のなかを我勝ちに突き進んでいる。排気ガスが充満し、森のような巨大ビルの群が増殖しつつある大都市、これが人間社会が目指していた「未来都市」なのか?深夜の市街では、おそらく地方の農村から来たと思われれる青年たちが、黙々と道路工事に携わっていた。都市基本問題研究会にとっての真に「基本的な」問題が上海に集約しているように感じられた。(2009年9月29日)

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