宇波彰現代哲学研究所

多種多様な「知」の交流を通じ文化創造との実践的な橋渡しをめざし、新たな学問分野の開拓を行う研究機関のブログです。

不気味なエクリチュール

 6月11日から7月3日まで三鷹市美術ギャラリーで太宰治資料展Ⅱが開催されていた。展示物の中に「水仙」と名づけられた太宰の油絵があった。それは薄気味悪さや違和感を覚えるものである一方で、哀れさと儚さを内包しているような不思議な印象を抱かせるものであった。「この絵を描いた一年後に太宰は短編小説『水仙』を発表した」。解説文に書かれていた言葉が気になった。小説の存在を知らなかった私は絵と小説との連関性を探ってみたいと考えた。だが雑事に追われ、すぐにこの作品を読むことができず、7月の終わりになり、やっと『水仙』を手にすることができた。強く惹きつけられるような魅力ある作品ではなかったが、探究すべきいくつかの重要な問題が内在している。そう感じた私はこのテクストを書き始めた。
 

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今村仁司『交易する人間』を再読する

 すぐれた思想家であった今村仁司(1942~2007)が亡くなって、まもなく10年になる。彼が2000年に刊行した『交易する人間』が、最近になって講談社学術文庫として再刊された。この機会に本書の意義を考えたい。

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