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宇波彰現代哲学研究所

多種多様な「知」の交流を通じ文化創造との実践的な橋渡しをめざし、新たな学問分野の開拓を行う研究機関のブログです。

聖徳記念絵画館の連作壁画について

 明治神宮外苑にある聖徳記念絵画館で10月6日から11月11日まで「明治維新150年記念特別展:明治が見た世界~巨大壁画でたどる日本開国史~」という展覧会が開催されていた。明治維新から150年という問題に特別関心があった訳ではなかったが、近くで用事があり、その帰り道に気軽な気持ちでこの展覧会に寄ってみた。しかし、この絵画館に飾られている80枚の壁画を見て、検討すべき問題が数多く見出され、私は日本の近代史において重要な時代と見なされている明治期についてじっくりと考えるべきであると思った。もちろんこの短い論考で多くの問題を十分に分析することはできないであろうが、それでもこのテクストを書くことによって何らかの考察が可能であると思ったのである。
 展覧会には開国当時の写真、明治政府お抱え外国人の描いた歴史画、日露戦争を勝利に導いた秋山兄弟の手紙など多くの史料が展示されていたが、私の探究心を刺激したものは常設展示されている80枚の壁画であった。何故なら、この壁画を分析することによって、大正後期から昭和初期にかけて一般大衆をイデオロギー的に誘導した象徴的な政治・宗教的コントロール装置を理解できると考えられたからである。この壁画の分析だけで厳密に当時の支配階級の用いていた政治・宗教的コントロール装置の本性を厳密に解明することはできないであろうが、それでも大まかな様相は捉えることは可能であろう。それゆえ、ここでは以下の手順に従って80枚の壁画の特質を考察していこうと思う。
 最初にこの80枚の壁画が制作された経緯や壁画のテーマとしてどのような歴史的出来事が主題化されているかという点について見ていく。次に壁画の描写対象、人物構成などを数量的に分析し、そこから導かれる問題について考察していく。三番目に歴史画という視点から他の国とくにヨーロッパで描かれたこの種のジャンルの絵画と80枚の壁画の何点かを比較検討する。そして最後にこの三つの探究結果を総合化していく。 

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