宇波彰現代哲学研究所

多種多様な「知」の交流を通じ文化創造との実践的な橋渡しをめざし、新たな学問分野の開拓を行う研究機関のブログです。

ラカンへの関心

 去る11月14日(土曜日)に、明治学院大学2202教室で「ジャック・ラカンを考える」というコロックを行なった。報告者は保科正章、向井雅明と私の三人である。保科氏は名古屋でクリニックを開いている精神科医、向井氏は高松と東京で「分析家」として活動している。保科氏の報告は、1962年から63年においてラカンが行なった「セミネールX」の或る部分を厳密に読む試みであった。ラカンはフロイトのテクストを一行ずつ(ligne par ligne)読むことを求めたが、保科氏の報告は、そのラカンの方法をラカンのテクストについて用いたものである。保科氏の実践に裏打ちされた報告は、アカデミックであると同時に実践的であった。
 向井氏の報告は「精神分析における身体性」をテーマにするものであった。ラカンの鏡像段階理論をもとにして、そこから必然的に帰結されるリマジネール、ル・サンボリックの境界を設定し、ル・サンボリックに入っていけない自閉症のケースを鮮やかに解読するものであり、きわめて厳密なプロセスに従い、ラカンについての深い理解に支えられたものであった。
 私は、ラカンの考えの中に含まれている哲学的な思考として、最近になって私自身が考えている「反復」の概念を中心に報告した。
 そのあとの質疑応答もきわめて質の高いものであった。この有意義な催しの実行を可能なものとしたのは、明治学院大学言語文化研究所のスタッフの方々のご尽力によるものであり、所長の四方田犬彦氏、面倒な実務にたずさわって下さった深澤比呂子さんを始め、協力して下さった方々に厚くお礼を申し上げたい。なお当日の発言の記録は2010年春に刊行予定の『言語文化』(30号)に掲載の予定である。 (2009年11月19日)

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