宇波彰現代哲学研究所

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田母神論文を支えるもの (4)

国家基本問題研究所とは?

この座談会に出席している平川祐弘は「国家基本問題研究所」の理事である。さきに言及した「源氏物語千年紀式典」でも講演をしている。すでに言及した小堀桂一郎とともに、東京大学の比較文化学科の中心的な教授だった。この学科の出身である小谷野敦が、「駒場学派」について著作をまもなく刊行するという(新書館)が、なぜそこが保守派・右翼学者たちの巣窟になったのかが書かれているであろうか。さて、その平川祐弘が「国家基本問題研究所」にかかわっているということは、「源氏物語」が「国家基本問題」とつながることを示しているともいえる。この研究所の理事長はほかならぬ櫻井よしこである。理事には、平川祐弘のほかに石原慎太郎、自民党の国会議員で、映画「靖国」の上映についての問題で登場した稲田朋美、京大教授の中西輝政、さらに渡辺周、松原仁といった民主党の国会議員の名も見える。
いったい、国家基本問題研究所とどういう組織なのか。この研究所の「趣意書」を見ると(インターネットで読める)、安部晋三元首相が提案していた「戦後レジームからの脱却」が基本的なモットーであり、憲法の変更を求めていることがわかる。そして、自民党が大敗した2007年の参議院選挙の結果は「国家としての重大な欠陥を露呈」したものだと断定されている。国民の意見が「重大な欠陥」というのはどういうことなのか?さらに、私が特に注意しておきたいのは、この国家基本問題研究所のしゃれたロゴマークを横尾忠則がデザインしていることである。赤を基調に、「日の丸」をデフォルメしたしゃれたデザインのものである。芸術家が国家主義的機関に利用されている構図が見えてくる。しかし、このことで横尾忠則が批判されたという話は聞いていない。今日のいわゆる「美術評論家」たちにぜひこの問題について考えていただきたい。また、この研究所の資金はどこから出ているのかまだ調べてないが、「法人会費」は年額100万円である。どういう企業がこの組織を支えているのであろうか。
問題は若いひとたちに人気のあるという鹿島茂や横尾忠則といったひとたちが、渡部昇一、平川祐弘のような「右翼・保守知識層」の偉いひとたちと肩を並べ、彼らに「協力」する結果になっていることである。鹿島茂のような研究者、横尾忠則のような芸術家が、いつのまにか「右翼・保守知識層」のなかに取り込まれる状況を無視すべきではない。それは、鹿島茂に限らず、彼の世代のひとたちが、思想の世界の危機的な状況をよく把握していないからではないだろうか。渡部昇一や平川祐弘がどういう思想の持ち主であるかを知っていれば、彼らとの座談会に出席して、『愛国百人一首』を中学の先生に読ませようとする意見に反対もできないということにはならないはずである。鹿島茂や横尾忠則のような学者・芸術家が国家主義的なイデオロギー装置の「ソフト」として利用されている状況を直視すべきである。



(つづく)

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コメント


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福田朋美ではなく稲田朋美ですよ。

Jack | URL | 2009年04月07日(Tue)16:01 [EDIT]


ご指摘ありがとうございました。早速訂正しました。

宇波彰 | URL | 2009年04月07日(Tue)20:15 [EDIT]